わが町のイッパイアッテナ
こっそりオープンしてから1年以上、「何やってるかわからない(おまけにいつやってるかも)ナゾの建物」だった当店ですが、ありがたいことに、テレビで取り上げていただいたおかげで、少しずつ地域のお客さまも増えてきました。
そうしたらご近所にこんなにたくさん猫好きな方がいるんだなあ、ということもわかってきて嬉しい日々です。そして少なくない皆さんが、ご自分の猫事情を聞かせてくださるのですが、そんななかで、複数の方のお話に登場する猫さんがいます。
9年くらい前から我が家の庭によく遊びに来ていたメスのキジトラさんで、とても人懐っこく家のサッシを網戸にしているとぎりぎりまでやって来ます。めっちゃくちゃお喋りだけど、触られたり抱き上げられたりするのは怖いようでした。見た目からは想像できないような、それはもう可愛いハイトーンボイスの持ち主でした。
何年もうちに立ち寄っていましたが、そのうち姿を見なくなり、ああもう生きていないのかな...と思うようになった頃、またふらりと現れたり。でも4~5年前から本当に姿を見かけなくなりました。
我が家では子どもたちが「すずちゃん」と呼んでいたキジトラさん。ご近所のお客さまとお話をしていると、すずちゃんはいろんなお宅に立ち寄ってはいろんな名前で呼ばれ、可愛がられていたことがわかってきました。まさにリアルイッパイアッテナです。
皆さん、町田尚子さんのこちらの絵を見て、すずちゃんのことを思い出されるよう。
こんなに少なくない人の記憶に刻まれているすずちゃん。謎のベールに包まれている存在だったけど、生きた証がこんなにあちこちに残っているなんて、なんて太い猫生だったのでしょう。私もまた、お店でお話できるようになったことで、思いがけなく再会できた気持ちです。わが町にいたイッパイアッテナは、いなくなってもなお、とても存在感のある猫さんなのでした。
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